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【長編】早く結婚してくれ(1)

早く結婚してくれ
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1 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 05:41:30
従姉に恋をした。

信じられないほど心が痛い。
彼女に会ってから今日まで、一年一年、一日一日、その痛みは蓄積されて
いき、今は極限だと思う。それはもう彼女との未来など有り得ないのだと
実感してしまったからだ。

二ヶ月前のあの日に。

5年前、母が再婚した。嫁いで間もない冬のはじめ、嫁ぎ先のお姑さん
が亡くなった。その葬式の最中、彼女と初めて出会った。

彼女は母の再婚相手の姪っ子。歳は俺よりも2つ上。しかし小さな風貌の
せいか幼く見え、またバタバタした葬式の最中でもあったため、俺は紹介を
受けていたにも関わらず彼女の年齢など頭になく、高校生だと思い込んで
いた。だから別段、彼女に意識を払っていたわけでもなく、ましてや当時の
俺には結婚を約束していた彼女もいたため、そのファースト・コンタクトは
なんてことなく終わった。


2 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 05:44:49
俺は母の連れ子ではない。今現在も離婚した父(今も健在)の戸籍に
属している。だから厳密に言えば彼女とは血のつながりどころか戸籍上も
従姉弟関係にあるわけではない。

「君さえよければ私や私の子供たち、そして私の親戚たちのことを家族
だと思ってほしい。でも重く考えないでね。気を遣わなければならない
人間などいないし、みんな君のことをすでに家族だと思っているから」

母が嫁ぐ時、再婚相手の男性が俺に言ってくれた言葉だ。

俺は彼の一言がすごく嬉しかった。俺が育った家庭環境は親戚付き合い
など希薄だった。父も母も親類縁者と付き合うことを避けて生きている
人間だったから。

だから彼の子供たち(一男一女)や親戚の人たち(彼は6人兄妹だった
から一族の数はものすごく多い)がいっぺんに自分の家族になったこと
が嬉しくてしようがなかった。

そして事実、彼の言ったとおりみんなあったかい人たちだった。


3 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 05:46:16
俺はなんの衒も抵抗もなく、彼のことを「お父さん」と呼んだ。
お父さんの育った家庭環境も複雑だった。

お父さんの姓は「太田」だったが、親戚の人たちは「田中」姓だった。
それは田中の6人兄妹のうち、お父さんだけが太田家に養子に出されて
いたからだった。

しかし両家の交際が深かったため、6人兄妹はほとんど離れ離れになる
ことなく大人になったという。

その話を聞いた俺はますます、この一族の一員になれたことを嬉しく思い、
こんな素敵な人たちのところに嫁いでくれた母に感謝すらしていた。

しかしそんな俺の気持ちが、後々自分の障害になるなんて、当時は思いも
しなかったんだ。

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【長編】早く結婚してくれ(2)

早く結婚してくれ
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30 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/12(土) 01:12:42
1ヶ月ほど経った時だった。
俺は部屋の片隅にほっぽり投げていた物が気になりだした。

それは別れた彼女から借りていた本やCD。
律儀な性格というわけではないが、ちゃんと返さなければと思った。
きちんと別離の言葉を口にして別れたわけではなかったため、なんとなく
ケジメが欲しかったのだと思う。

でもとてもじゃないが、また会って手渡しする気はない。
宅配便で送るため、彼女のマンションの住所を教えてもらおうと数ヶ月
ぶりにメールをした。返事はすぐに返ってきた。

「私も借りていた物を送りますので貴方の住所を教えてください」

ハッとした。俺たちは互いの住所すら知らないでいたんだと。
些細なことだが、妙にさびしくて、やるせない気持ちになった。
彼女からの事務的なメールの文面を見つめながら、すぐに住所を送信した。

そして荷物を送る手筈を整え、俺は今まで彼女と送受信したメールと、彼女
のアドレスを抹消した。だが期待していた解放感は得られなかった。

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【長編】早く結婚してくれ(3)

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55 名前:1 ◆SemWiFNIUE [sage] 投稿日:2005/11/13(日) 02:22:10
従姉弟同士は結婚できる。そう聞いたことがある。
ましてや俺と恵子ちゃんは血のつながりのない赤の他人。
彼女が俺に対して恋愛感情を持ってくれているのかはわからなかったが、
もし交際の申し込みにOKしてくれたならば、その先の展開も期待できると
思っていた。

だが親父の存在が、俺の淡い期待に影を落とした。
親父は心に傷を負っていた。母との離婚で生じた傷だった。

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【長編】早く結婚してくれ(4)

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67 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/13(日) 23:27:54
従姉弟というつながりがある以上、完全に接触を断つことはできないが、
俺は恵子ちゃんへの想いを消すために距離をおくことにした。
幸い気持ちを彼女に伝える前だったし、今ならまだ抑制がきく。
俺は徐々に電話やメールの数を減らしていった。

2001年も最後の月を迎えた。
会社までの道すがら、クリスマス色の街を眺めながらふと思う。
(ウキウキしてたな、去年は)

しかしこの夜、そんな感傷も吹っ飛ぶような事件が、俺の身に起こった。

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【長編】早く結婚してくれ(5)

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97 名前:1 ◆SemWiFNIUE [sage] 投稿日:2005/11/16(水) 07:10:12
アパートまで恵子ちゃんが車で送ってくれた。
なんだか車内の空気が重く感じる。

「たかだか1週間の入院だったから、あんまり話を広めたくなかったんだよ。ただそれだけ」

なんだコレ。これじゃ彼氏が彼女に言い訳してるみたいじゃないか。

「ふーん」
そう言ったきり彼女は黙っていた。

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【長編】早く結婚してくれ(6)

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112 名前:1 ◆SemWiFNIUE [sage] 投稿日:2005/11/17(木) 05:04:06
それから一週間後。
俺は親父に電話し、食事に誘い出した。
すでに転勤のことは話していたので、やけに親父が寂しそうに見えた。
特に話すこともなかったのだが、なんだか別れ難かった。
親父はこれからの俺の生活に、
ただ「がんばれ、がんばれ」とだけ言い続けた。

別れ際、親父が祝儀袋を俺の手に握らせた。
掴んだだけで中身の厚さがわかった。
当時、親父は長年勤めていた建設会社を辞め、フリーの大工
(変な言い方だが)として全国を駆け回っていた。
何人か若い人間も雇っていた。決して生活は楽じゃなかっただろう。
俺は黙って受け取った。

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【長編】早く結婚してくれ(7)

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126 名前:1 ◆SemWiFNIUE [sage] 投稿日:2005/11/17(木) 05:22:25
クリスマス・イブ。

彼女がいない時の俺は
「ヘン!俄かクリスチャンどもめ!!」
と街行くカップルを妬ましく見つめるが、芽衣子さんがいる今は
「なんて素敵な日なんでしょう」
と穏やかな心でいる。

(単純だなぁ)

新幹線の中で苦笑しながら、彼女へのプレゼントが入ったカバンを
一撫でした。

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【長編】早く結婚してくれ(8)

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142 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:26:50
家まで送るという俺の申し出は断られた。
突然ひとりぼっちになった俺は、頭の整理がつかないまま、
今夜泊まる予定になっていたホテルへと向かった。

「お連れ様は?」フロント係りが憎たらしい。
「…後から来ます」

さっさとキーを受け取り、部屋へ。

広いなぁ、ダブルって。

一ヶ月前、知り合いのコネを使って無理してとったこの部屋も、今は何の
意味もない。だったら泊まらなければよかったのだが、知り合いの顔を
潰すわけにはいかなかった。眼下にはさっきのベンチが見えた。
こんなに惨めなクリスマスは初めてだ。

ルームサービスで頼んだワインボトルを空けた時、フラフラに酔った
俺は我慢できなくなって芽衣子さんに電話した。

出ない。

諦めて切った5分後、芽衣子さんからメールがきた。

「まだ冷静になれません。ごめんなさい。明日連絡します」

携帯を投げつけ、俺は寝た。


143 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/18(金) 08:28:08
翌朝、フロント係りの顔を見ないようにしながら清算を済ませ、
俺はホテルを後にした。外は快晴。幸せな夜を過ごしたであろう
カップルたちが、楽しげに歩いている。
気が滅入る。本当なら俺も仲間だったのに。

ファーストフードの店に入り、俺は芽衣子さんからの連絡を待った。
俺も芽衣子さんも今日は休みをとっていたから、連絡は必ずくる。
そう信じ、俺は携帯と芽衣子さんからもらったライターを両手に握り締めた。

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【長編】早く結婚してくれ(9)

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176 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:11:17
プライベートがうまくいってないと、仕事までうまくいかないのだろうか。

毎日なにかしらやらかし、何をしても空回りする日々がしばらく続いた。
社会に出て10年余、
どんなに辛いことがあっても仕事に影響するなんてことはなかった。
それが、色恋沙汰で我を失っている。
これじゃアカンがなと思う反面、案外俺も普通の人間だったんだなと
実感した。

177 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/19(土) 06:12:45
秋になった。
大きな失敗こそしなくなったが、相変わらず仕事はパッとしない。

ある日、見かねた先輩が俺を飲みに誘った。

「どうしたんだ、ここんとこ?何かあったか?」
「いえ、別に。何もないですよ」
「そうか?お前はそういうことあんまり話さないからなぁ。彼女と何か
 あったのか?」

彼は俺が転勤する際、本社から残務整理の手伝いのために来ていた人
だったので、俺と芽衣子さんが付き合っていることは知っていた。

「彼女とは…終わったんですよ」
「…そか。まぁ、どうせ話さんだろうから深くは聞かんけど」

そう言って、先輩はそれ以上クドクド説教することはしなかった。

飲んでいる間、先輩がさりげなく気を遣ってくれているのがよくわかった。

ありがたかった。
こんなところで駄目になっちゃだめだ。
たった1年かそこらで都落ちなんてしてられっか!
俺は少し前向きになれた。

そろそろお開きにするかというところで先輩が言った。
「パーッと合コンでもすっか?俺、セッティングしたる」

それもいいか。

「レベル高いの、たのんますよ!(笑)」
カラ元気で言った。

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【長編】早く結婚してくれ(10)

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216 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/21(月) 16:35:19
もう1コ、脳が欲しかった。
とてもじゃないが混乱しすぎて整理できない。
また病気が再発したんじゃないかと思えるほど鼓動もひどい。

ようやく、半開きになった口から言葉を出した。

「かかか、彼氏は?彼氏のことは?」

「別れたの」

恵子ちゃんはずっとそっぽを向いたまま、こちらを見ようとしない。

「別れたって…どうして!?」

恵子ちゃんが上ずった声を上げた。

「理由なんかない!」



「健吾君が、好きなんだもん」

もうこの場に居るのが耐えられなかった。

「ごめん。考えさせて」

俺は逃げた。

最後まで恵子ちゃんはこちらを見なかった。

217 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/21(月) 16:36:38
いつもなら爆睡する新幹線。でも今日は寝れるわけがない。

うれしかった。正直に。

本当に好きで好きでたまらない相手から告白された。
初めての経験。

恵子ちゃんの顔が浮かぶ。
思考が短絡化する。

もう何も考えないで、恵子ちゃんの気持ちに応えてしまおうか。
「俺も好きです」と、ぶちまけてしまおうか。

きっと最高の日々が始まる。
笑顔の俺の顔が頭に浮かんだ。


…いけね。また口、開いてら。

乾いた口の中を舐めた時、親父の顔も浮かんできた。

218 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/21(月) 16:37:35
我に返ると横浜に着いていた。
あんなに考え事をしていたのに乗り換えミスも乗り過ごしもしていない。
習性ってすごいなと、くだらないことを考えて気を紛らわそうとした。

引き出物を床に広げ、もらった折り詰めに箸をつける。
普段食べてるコンビニ弁当よりも格段に豪華な食事。
なのに食がすすまない。

恨むよ、恵子ちゃん。
せめて夕食後に告白してくれれば。
いや、だからといってどうというわけじゃないんだけど。

愚にもつかないことを考えながら、食べ残した折り詰めを冷蔵庫にしまう。

ダメだ。今日は何も考えられない。
車の中での風景がリピートされる。

「考えさせて」

馬鹿な台詞を吐いたもんだ。考える余地なんて、そもそもないだろ?
もうずっと昔から、答えなんて決まってただろうに。

もう寝よう。夢を見よう。いい夢たのむ。

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【長編】早く結婚してくれ(11)

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300 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:28:44
11月。夜勤明け。

携帯の留守電をチェックしたら親父からメッセージが入っていた。
「母さんのことで話がある。連絡をくれ」

大抵は忙しさに託けて電話を返さない俺だったが、
この時のメッセージはなんだか親父が普通じゃない気がした。
しかも親父の口から母のことが出るなんて。

夜、親父に電話した。

「あのな。お前には言ってなかったんだが」

前置きした親父が語った話はひどく俺を動揺させた。

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【長編】早く結婚してくれ(12)

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318 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:45:18
それは3月に入ってすぐの、日曜日の朝のことだった。

夜勤明けでマンションに帰ると、
エントランスホールの郵便受けの前に、
長髪のデカい男が立っていた。
そいつの足元には大きな旅行用トランク。
なにやら携帯で話していた。

(マンションの住人じゃないな)

俺の住んでるマンションは、
エントランスホールにあるインターフォンの操作盤に鍵をささないと
エレベーターが動かないようになっていた。
部外者が2階以上に上がるには、インターフォンで住人に呼びかけ、
エレベーターを動かしてもらわなければいけない。

(邪魔くせーな)

そいつをすり抜けるようにして郵便受けに手を伸ばしたら、
そいつが声を上げた。

「あ」

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【長編】早く結婚してくれ(13)

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331 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2005/11/25(金) 11:58:54
2時間コースが終了し、俺たちは軽く飲んでから帰ることにした。

行き着けのバーに案内した。

軽く、のつもりが昔話に花が咲き過ぎた。
お互い酔っているのがすぐわかるほどだった。
でも酒が美味くてやめられない。
今度コイツと飲める日なんて来ないかもしれない。
そう思うと今日という日が惜しくなり、潰れる覚悟でおかわりし続けた。

「そういえば、さ。お前、真子とはあの後どうなったん?」

グラスにしな垂れかかりながら大が言った。

「真子って、バンドの時の真子か?」
「他にいねぇだろ」
「あの後って、なんだよ?どうなったってのは?」
「周平が死んだ後だよ。お前、真子のこと好きだったんだろが」

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【長編】早く結婚してくれ(14)

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668 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 15:31:35
ご無沙汰しております。1です。
五ヶ月もの間このスレッドを放置してしまい、本当に申し訳ありませんでした。
非常に遅れ馳せながら、続きをアップさせていただきます。
これが最後になります。
とても長い文章となっておりますがどうかご容赦ください。

また、最後に文章をアップした昨年11月から本日に至るまでの経緯を
後ほどお話しさせていただきます。
今更ですみません。

669 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 15:33:42
大が去って3週間。
3月も終わりを告げた時だった。

俺は故郷への出張を命じられた。
仕事の内容は新入社員への研修。日程は一週間。

研修開始日の前日夜、俺は故郷に先乗りした。
前もって太田家には出張のことを連絡していたので
お父さんは太田家への滞在を勧めてくれたが、
連日、同僚との飲み会が予想されたため、
俺は迷惑をかけまいとお父さんの申し出を辞退していた。

会社のとってくれたホテルに、俺は苦笑した。
そこは三年前のクリスマスイブに、芽衣子さんと泊まるはずだったホテル。
さすがに同じ部屋ではなかったけれど、窓から見える夜景は変わらなかった。

一瞬よぎるほろ苦い思い出。

(思い出…になったなぁ)

缶ビール片手に、しばらく夜景を眺めた。



翌日。
古巣である事務所に出勤すると、懐かしい顔が俺を出迎えた。
転勤前によくパートナーを組んでいた後輩・友枝だった。

「お久しぶりです!
今日は俺が大塚さんのアシスタントですよぉ。凸凹コンビ復活!!(笑)」

ずんぐりむっくりとした体躯に、人懐っこい笑顔。
男の俺から見ても可愛らしく感じる友枝は、少しも変わっていなかった。

いや、少しお洒落になったかな。
趣味の良いワイシャツとネクタイが似合っていた。

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【長編】早く結婚してくれ(15)

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684 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 15:51:41
東京に帰り、いつもと変わらぬ日常に戻った俺の元にメールが届いた。

恵子ちゃんからだった。

『ゴールデンウィークに親戚一同集まってバーベキューします。
 健吾君、来れるかな? ていうか、絶対来ーい!(笑)』

文字がやたら愛しい。

返信。

『喜んで参加させていただきます』

断る気はなかった。

一歩、前へ。

俺は歩ける気がした。

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【長編】早く結婚してくれ(16)

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693 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:00:07
明くる朝、帰りの身支度を整え居間に下りると、母はすでに仕事に出た後
だった。

結局、母はあれ以上なにも言わなかった。

(なんか…言ってほしかったな)

賛成にせよ反対にせよ、何かしら母の言葉が欲しかった。

賛成ならば感謝した。
反対ならば説得した。

昨日、絶好のタイミングを逃してしまった俺は、
情けないが俺を後押しする何かを求めていた。

駅まで俺を送るために、お父さんが起きてきた。
玄関へ行き、靴を履く。
と、靴の中に何かが入っていた。

『健吾様』と書かれた小さな封筒だった。

お父さんに見つからないよう、あわててポケットに閉まった。

駅に着くと新幹線の時間にはまだ間があった。
お父さんは発車時間まで付き合うと言ってくれたが、
二日酔いで辛そうだったのですぐに帰ってもらった。
なにより、封筒を早く開けたくて仕方ない気持ちもあった。

手近な喫茶店に入り、荒々しく封筒を破った。
中には母からの手紙が入っていた。

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【長編】早く結婚してくれ(17)

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707 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:13:44
恵子ちゃんの仕事が終わってからということで、
待ち合わせは夜8時に設定していた。

家にいても余計なことを考えるばかりなので、日中から街に出た。
しかし、何をしていればいいのか思いつかない。

映画館に行ってみた。
ストーリーがまったく頭に入らず、1800円をドブに捨てた。

本屋に入った。
知らず知らずのうちに恋愛ハウツー本を手にとっていた。
しかもよく見ると女性向けだった。

喫茶店で休んだ。
ぼーっと、恵子ちゃんのことを考えた。
…なんだよ。
これじゃ家にいるのと同じじゃないか。

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【長編】早く結婚してくれ(18)

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720 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:25:23
昼前。
式から参列することになっていたので、早めに式場へと向かった。
郊外の大きなレストランが式場だった。
レストランウェディングというやつだ。
東京などでは珍しくないが、まだまだこの街では目新しい。

控え室で待っていると、友枝が顔を見せた。
俺の姿を認めるや、小走りに駆け寄ってくる。

「おおおつかさぁぁぁん」

予想を裏切らず、友枝はガチガチに緊張していた。
真夏とはいえ、空調のきいた室内なのに、燕尾服の襟元が汗でびっしょりだ。

「だいじょうぶかぁ?」
「気持ち悪いです。吐くかも」
「緊張してるだけだよ。しっかりせい(笑)」
「ダメです。吐いてきます」

そそくさと友枝が手洗いへと消えた。

どうやら式に参列するのは新郎新婦の友人がメインのようで、
会社関係は俺と上司だけだった。
上司と話しているのも飽きた俺は、式場内を当て所もなくうろついた。

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【長編】早く結婚してくれ(19)

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728 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:33:30
恵子ちゃんの家までは高速で40分程度の道のり。

ふと車窓を流れる街灯を見送りながら、
俺は自分に起こっている変化に気づいた。

なんだか恵子ちゃんとの会話に熱が入らない。
会話がブツリブツリと途切れる。
そのうち、押し黙ってしまった。

この緊張はなんだ?

まるで、結婚の挨拶に行く時のような…。

馬鹿な。
そんな大仰なものじゃないだろうに。

何度も自分に言い聞かせたが、
一度意識した心が、頭の命令に従うはずもなかった。


729 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:34:29
「はい。着きました、と」

エンジンを止めた恵子ちゃんが、俺をまじまじと見つめている。
右顔面にその視線を感じてはいたが、俺は彼女に向き直ることも出来ず、
フロントウインドウに熱い視線を投げ続けた。

「だいじょうぶ?」

看破されていることにたじろぎ、うろたえ、虚勢をはった。

「な、なにが!?…さ、さあ、行こう!」

恵子ちゃんに一瞥もくれず、玄関へとまっすぐ進んだ。

しかし…扉を開けられない。チャイムに手が伸びない。

恵子ちゃんが一歩後ろで俺の様子を見ていた。
振り向き、懇願した。

「…ごめん、開けてぇ」

恵子ちゃんが、手で口を押さえながら笑いをかみ殺している。
彼女の気が済むまで俺は待った。

ようやく笑いを終わらせてくれた恵子ちゃんが、
ゴホンとひとつ咳払いをして扉を開けた。
緊張復活。

「ただいま〜」

出迎えたのは浩美さんだった。

「あら、健吾君!?恵子を送ってくれたの?」
「い、いえっ、運転してたのは恵子ちゃんで、あの、その」
「とにかくあがって」

もう堪えられないとばかりに恵子ちゃんが吹いた。
ちょっと恵子ちゃんが小憎らしくなった。

居間に通され、茶を出された。
石像のように固まっている俺を見て、相変わらず恵子ちゃんは肩を震わせている。
浩美さんが台所に行った隙に、軽く恵子ちゃんの首を絞めてやった。
またも恵子ちゃんが吹き出した。

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【長編】早く結婚してくれ(20)

早く結婚してくれ
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【恋愛サロン】

743 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:48:39
2005年9月9日 金曜日 午後11時過ぎ。
恵子ちゃんとのデートまで一週間と迫った夜。

夜勤明けのその日、夕方から床に就いていた俺は1本の電話で起こされた。
母からだった。

「恵子ちゃんが倒れて、病院に運ばれたそうなの」

母の声は落ち着いていた。
それは、俺にも落ち着けと言っているようだった。

「とりあえず守さんからそのことだけ連絡がきたんだけど、状況が
 よくわからないの。詳しいことがわかったらすぐ連絡するからね?いい?」

わかってる。わかってる。
だいじょうぶ。だいじょうぶ。

冷静に自分の言っていることを反復した。

10分。
20分。
30分。

電話はぴくりとも声をあげない。
この間、何をすべきか考えることもなく、自然に身体が動いた。
まるでこれから会社にでも行くように、歯を磨き、髪を整えた。

0時。
あらかじめセットしていた目覚まし時計が鳴った。

それが徒競走の合図でもあるかのように、
俺は携帯と車のカギを握り締め、外に飛び出た。

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posted by なな at 01:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛サロン

【長編】早く結婚してくれ(21)

早く結婚してくれ
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756 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:58:42
他の参列者はすでに終わっていて、俺と勲夫さんだけとなっていた。
それぞれ恵子ちゃんの左右にまわり、オレンジ色の花をそっと顔の近くに
置いた。

じっとその顔を見つめる。

どんなに生きているかのように化粧が施されていても、
動かず、表情もなく、ただそこにあるだけの存在。

眠そうに目をこすりながら、『おはよう!』と笑いかけてくる、
そんな気配はもう消え失せていた。

棺に蓋が被せられた。
参列者が一打ち一打ち、一本一本、釘を打ち付けていく。

蓋の小窓が閉じられようとしていた。

そこからのぞくものを決して目に焼き付けないように、俺は視線を逸らした。

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posted by なな at 01:47 | Comment(36) | TrackBack(0) | 恋愛サロン

【長編】早く結婚してくれ(エピローグ)

767 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:12:43
以上です。

まずはこのような駄文・長文にお付き合いくださったみなさんに
あらためて御礼を申し上げます。
そして重ねて、
長期に渡りスレッドを放置した件についてお詫び申し上げます。
本当にすみません。

このスレッドを立てた当時、私は精神的にも肉体的にも病んでいました。
何をしていても考えることは彼女のことばかりで、
食事も睡眠も満足にとっていませんでした。

そして心身共に日に日に弱っていく中、この2チャンネルに出会いました。
お恥ずかしい話、コンピュータ業界に身を置きながら
この掲示板について全くの無知だった私は、とあるスレッドに書かれていた
悩みと、それに対する多くの意見・アドバイス・励ましを拝見し、とても
感動しました。
そこには真摯に相談を受ける人々と、
それによって悩みから解放された人々がいました。


768 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 17:13:39
私はこの掲示板に縋ることで楽になれるのでは…と考えました。
おかしな話ですが、家族や身近にいる友人よりも、
モニターの向こう側にいる赤の他人に救いを求めたのです。

そして私は書き始めました。
仕事をしていても、寝ても覚めても、このスレッドのことばかり考えました。
ある意味、捌け口として成功していたと思えます。
文章を書くために彼女との出来事を思い出していく作業―
それは一見矛盾しているようですが、機械的なその作業に熱中することにより、
確実に悲しみや痛みが和らいでいったのです。
そして何よりみなさんからの感想、アドバイス、激励、叱咤その他諸々が
ますます私をこのスレッドに没入させていきました。

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posted by なな at 01:45 | Comment(196) | TrackBack(0) | 恋愛サロン

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