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2006年05月07日

【長編】早く結婚してくれ(1)

早く結婚してくれ
http://love3.2ch.net/test/read.cgi/lovesaloon/1131655290/l50
【恋愛サロン】

1 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 05:41:30
従姉に恋をした。

信じられないほど心が痛い。
彼女に会ってから今日まで、一年一年、一日一日、その痛みは蓄積されて
いき、今は極限だと思う。それはもう彼女との未来など有り得ないのだと
実感してしまったからだ。

二ヶ月前のあの日に。

5年前、母が再婚した。嫁いで間もない冬のはじめ、嫁ぎ先のお姑さん
が亡くなった。その葬式の最中、彼女と初めて出会った。

彼女は母の再婚相手の姪っ子。歳は俺よりも2つ上。しかし小さな風貌の
せいか幼く見え、またバタバタした葬式の最中でもあったため、俺は紹介を
受けていたにも関わらず彼女の年齢など頭になく、高校生だと思い込んで
いた。だから別段、彼女に意識を払っていたわけでもなく、ましてや当時の
俺には結婚を約束していた彼女もいたため、そのファースト・コンタクトは
なんてことなく終わった。


2 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 05:44:49
俺は母の連れ子ではない。今現在も離婚した父(今も健在)の戸籍に
属している。だから厳密に言えば彼女とは血のつながりどころか戸籍上も
従姉弟関係にあるわけではない。

「君さえよければ私や私の子供たち、そして私の親戚たちのことを家族
だと思ってほしい。でも重く考えないでね。気を遣わなければならない
人間などいないし、みんな君のことをすでに家族だと思っているから」

母が嫁ぐ時、再婚相手の男性が俺に言ってくれた言葉だ。

俺は彼の一言がすごく嬉しかった。俺が育った家庭環境は親戚付き合い
など希薄だった。父も母も親類縁者と付き合うことを避けて生きている
人間だったから。

だから彼の子供たち(一男一女)や親戚の人たち(彼は6人兄妹だった
から一族の数はものすごく多い)がいっぺんに自分の家族になったこと
が嬉しくてしようがなかった。

そして事実、彼の言ったとおりみんなあったかい人たちだった。


3 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 05:46:16
俺はなんの衒も抵抗もなく、彼のことを「お父さん」と呼んだ。
お父さんの育った家庭環境も複雑だった。

お父さんの姓は「太田」だったが、親戚の人たちは「田中」姓だった。
それは田中の6人兄妹のうち、お父さんだけが太田家に養子に出されて
いたからだった。

しかし両家の交際が深かったため、6人兄妹はほとんど離れ離れになる
ことなく大人になったという。

その話を聞いた俺はますます、この一族の一員になれたことを嬉しく思い、
こんな素敵な人たちのところに嫁いでくれた母に感謝すらしていた。

しかしそんな俺の気持ちが、後々自分の障害になるなんて、当時は思いも
しなかったんだ。

9 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:38:51
その年、2000年のクリスマスに、俺は付き合っていた彼女にプロポーズした。

この街では数少ない小洒落た店を予約し(俺は地方都市で育った)
大枚をはたいて買ったエンゲージ・リングを彼女の薬指にはめた。

18の頃に両親が離婚し、間近で見せられた彼らの修羅場がトラウマとなって
いた俺は、「結婚」なんてものになんの幻想も夢も抱いていなかった。

その俺が結婚する。結婚できる。俺のトラウマは癒されたんだと思った。

満面の笑顔で彼女が言う。

「ウチのお父さんの説得、ふたりでがんばろうね」

彼女は3人姉妹の真ん中で、上・下の姉妹はすでに嫁いでいた。
それゆえにいつも「お前の結婚相手は婿入りできる人間でないと認めない」
と、彼女は父親から釘を刺されていた。

俺はプロポーズの前に彼女に言っていた。

「俺の母親は再婚してるから安心だけど、親父はずっと一人身で暮らして
 いる。彼に再婚する意思はないし、この先も独身でいるだろう。
 だから俺は君の家に婿入りするわけにはいかないんだ」

彼女は俺の気持ちを快く汲み取ってくれた。

「お義父さんも一緒に幸せになろうね」

そんなことも言ってくれた。幸せだった。
この幸せな気持ちさえあれば、彼女のオヤジさんもきっと説得できると、
自信を持っていた。


10 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:40:47
それからまもなくのある日、俺は彼女の実家に挨拶に行った。

オヤジさんは渋い顔つきをしていた。
すでに彼女から俺が婿入りの意思のないことを聞かされていたからだろう。
座布団も茶も出なかった。
まあ当然だろう、と俺は気合を入れてオヤジさんと話し始めた。

「はじめまして。大塚と申します」
「話は聞いてる。認めない」

呆気にとられた。

「私たち夫婦に残されたのはこの娘だけだ。この娘までとられたらこの先、
 私たちの面倒は誰が見る?」

俺はめげない。

「私が婿入りしないとしても、それはお義父さんたちの世話をしないという
 ことではありません。ただ一緒に暮らせないというだけであって、お義父
 さんたちから彼女を奪うつもりはないのです。
 私を家族として認めていただきたいのです」

ここまで理路整然と話ができたかはおぼえていない。
オヤジさんは聞く耳を持ってくれなかった。

「家族になりたかったら、戸籍上でも正式になりなさい」

太田のお父さんのことが頭に浮かんだ。
血のつながりや戸籍についての考え方、それは人によってこうまで違うもの
なのか。そんなことを考えたり聞いたりしたことがなかった人生だった
俺だから、二の句が出てこなかった。

情けないが彼女に目を向けた。ヘルプミーだった。
しかし彼女はずっと目を伏せたまま、とうとう最後まで一言も口を開くこと
はなかった。


11 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:43:00
とりあえず、また今度お伺いしますと辞去した。彼女が車で送ってくれた。

車中は静かなものだった。俺は戸惑いやら怒りやらで混乱した頭を押さえ
つけ、精一杯、虚勢をはった。

「まあ、時間をかけてがんばる…か!」

その俺の言葉も彼女は聞いていないかのように、ポツリと言った。

「無理かも…」

俺は爆発した。

「なんでだよ!?まだ一回目だぞ!ふたりでがんばろうって言っただ!?」

彼女はすっかり怖気づいていた。すぐに冷静さを取り戻した俺は、やんわり
と、なだめすかしながら、しかし結論も出せずにこの日は彼女と別れた。

翌日は彼女とのデートだった。うまく事がすすんでいたら、本当は俺の両親
(もちろん太田のお父さんも含め)に挨拶に行くはずだった日。
甘かったな〜と苦笑しつつ、彼女との待ち合わせ場所である喫茶店へと
入る。いつもの席に彼女がいた。

彼女はいつもと変わらなかった。俺もいつもと変わらないように装った。
俺のバカ話にケタケタと笑う彼女に安心し、昨日の話を切り出した。

「昨日は情けない終わり方になっちゃってごめん。甘かったよ俺」

下げた頭を戻すと彼女の強張った顔があった。…ん?なんだ?? 
話を続けた。

「早いうちにリベンジしたいから、お義父さんたちの都合を確認しといてく
 れるかい?」
「うん。わかった」

彼女の顔がいつもの顔に戻った。また安心した。

「ゆっくりと、時間をかけてがんばろうな」

むしろ自分に言い聞かせるように言った。
そして彼女に会ったのはこれが最後になった。


12 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:44:51
オヤジさんたちの予定を確認するため、俺は何度も彼女に電話をした。
仕事が忙しくもあったので、直接彼女に会えなかったからだ。

しかしいつ聞いても、都合が悪いらしい、の一言だけ。
オヤジさんは観光バスの運転手だったから、そりゃ仕方ないかと始めのうち
は納得してた。しかし3週間、4週間先の予定を聞いても同じ返事が返ってくる。

ああ…まだ彼女は怖気づいているんだな、と感じ、俺は少し彼女に時間を
与えようと思った。その話が終わると、電話口の彼女の声はうってかわって
明るくなった。

次のデートはあそこに行こうよ、ホワイトデー期待してるゾ、etc.etc…。
ちょっとムッとした。
そんな目先の楽しみで誤魔化したって仕方ないんだぞ。優先すべきことから
逃げるなよ、と。

今度いつ会える?と聞いてきた彼女に、俺は仕事を理由に
「ちょっとしばらく難しいな〜」
などと意地悪をした。会えないほどの忙しさではなかったけれど、彼女が
オヤジさんたちの都合を取り付けてくるまで会うまい、と俺は決めてしまった。

…今思うと、なんて度量の小さいヤツなんだ俺は。


13 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:46:44
そんなこんなしているうちにゴールデン・ウィークを迎えた。
彼女の返事に変化はない。業を煮やした俺は、GWの予定を立てようと
楽しげに話す彼女を突き放した。

「出張があるから遊べない」

非常に残念がったが、彼女は渋々納得した。
実際、出張の予定などなかったが、この野郎、GWをひとりで過ごして
反省しやがれ、などと俺の心は最低だった。
自分もひとりでGWを過ごすことになるのに馬鹿だよねコイツ。

GW初日の朝、しっかりと仕事も休みだった俺は、生まれて初めての一人
旅を思いついた。
手早く荷物をまとめて駅へ行った俺は、その場で行き当たりばったりに
行き先を決めた。広島。なんで広島??

とりあえず新幹線で東京へ。車内で何度となく彼女のことを考えたが、
無理矢理に心を浮き足立たせる。ハメはずしてやる。
東海道新幹線はグリーン車に乗ってやるぞ。座席にゃテレビが付いてて、
美人のアテンダントがおしぼりやらコーヒーやら持ってくるんだ。
浮かれた俺の頭に、飛行機を使う考えなど浮かばなかった。


14 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:49:11
広島は良かった。
初めての一人旅ということもあったが、何もかもが楽しかった。
気分も晴れかかっていた。2泊目の夜、地元で有名なジャズバーへと足を
運んだ。ほろ酔いの頭をベースの音にのせて躍らせていた時、地元OLと
思しき2人組が俺に声をかけてきた。

「おひとりですか?」
「ええ」ウホ、逆ナンかい。
「一緒に飲みません?でも彼女に怒られちゃうかな?」
「んなもん、いませんいません。どぞどぞ」

うっとりと曲に耳を傾けつつ酒を飲む。会話も弾んだ。
そしていつしか(なぜか)、話題は男女の恋愛心理になっていた。

A「このコ、今彼氏とのことで悩んでるんですよ」
B「聞いてもいいですか?」
俺「ん?なぁに?」相当酔ってた。
B「結婚しようってことになって、この間ふたりで実家に挨拶に行ったんで
  す。そしたら父が『認めん』て言い出して。彼は一生懸命説得しようと
  がんばってたんですけど、私は父の剣幕にびっくりしちゃって…何も言
  えなくなって…涙出てきたんです。そしたら彼と父がケンカになっちゃ
  って…」

…あんた方、もしかして俺のこと知ってます????酔いが醒めた。

B「帰り道、彼に謝ったんです。何も言えなくてごめんて。そしたら彼『泣
  いてるお前見てたら、なんだかお義父さんに腹がたっちゃってさ。なん
  でだろ?ごめんな』って。嬉しかったけど、なんだか気まずくなっちゃ
  って、それ以来彼とこの話題に触れてないんです。もう彼、結婚する気
  なくなっちゃったんでしょうか?」

俺、なーんも言えんかった。多分ぽけーっとした顔してたんじゃないだろうか。

「その彼氏なら大丈夫。多分、君から言ってくるのを待ってると思うよ」

なんとかそんな言葉を捻り出した。


15 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:51:31
2軒目に行く気にはなれなかった。誘ってはくれたけど、大したことも
言えない俺に彼女らも肩透かしをくらっていただろうし。
それよりも早く地元に帰りたかった。会いたかった、彼女に。
ちゃんと会って、ちゃんと話をしようと思った。
翌朝、予定していたもう1泊をキャンセルしてホテルを出た俺は、開店と
同時にみやげ物屋を物色した。彼女の実家へのおみやげを買い足した。

地元に帰った俺はすぐさま彼女に電話した。

「おかえり!出張、無事済んだの?」
「(後ろめたい気持ち全開)…うん。なんとか」

気を取り直して俺は言った。

「おみやげ買ってきたよ。お義父さんたちの分も。これ持ってまた挨拶に
行きたい。GW終わってからなら、お義父さんの仕事も一段落するだろ?」

彼女が言った。耳で聞いた最後の生声だった。

「…う〜ん…まだしばらく無理っぽいみたい」

限界がきた。

「なんなんだよ!!逃げんなよ!!俺は○△□●▲■○△□●▲■!!!」

もう今となっては何を言ったのか、何を言えてたのかはわからない。
とにかくなじりまくってた気がする。押し黙る彼女。それが尚、ムカついた。

「俺、間違ったこと言ってるか!?もういいよ!!」

こうして俺の結婚話は終わった。トラウマが蘇ってきた。
今、しみじみ思う。ここで彼女と別れなければ、俺が短気でなかったならば、
従姉のあのコに恋することもなかったと。


16 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:53:20
その年の秋口の頃だったか。田中一族の娘さんの結婚式があった。
当然のように、お父さんが披露宴への招待状をくれた。

まだ傷も癒えていない俺に他人の結婚の祝福などきつかったが、その好意が
嬉しかったので参列することにした。当日、式は田中一族が住んでいる土地
で行われた。

その土地は俺やお父さんたちが住んでいるところからはかなり離れた田舎
で、同じ県内ではあるものの風景が全く違っていた。快晴の下の田畑がな
んだかきれいだ。披露宴までの待ち時間は一族の長兄の家でつぶすことに
なった。

すでに何人か親族が待機していたところに俺が顔を出す。よく来たと迎えて
くれる親族たち。みんな方言丸出しだが、それがあったかくて俺は好き
だった。

そこに従姉のあのコ・恵子ちゃんがいた。軽く挨拶を交わす。
お互いなんとなく見たことあるな〜という表情。あ、あのコか。あっちも
俺のことをそう思っただろうな。お姉さんの赤ちゃんをあやしている彼女
を、することがない俺は見るともなしに見ていた。なんだろう?

やけにオバサンくさい、いやいや、落ち着いている。別段美人というわけで
はないのだが、顔立ちに落ち着きが備わっている。今時の高校生ってのは
こんなに大人っぽいものなのか?確かにそこいらのギャル然としたケバケ
バしい女子高生とは違い、見た目は清楚でパーティドレスもしっくりきて
いる。それにしても、なぁ。


17 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:55:00
披露宴が始まった。俺と恵子ちゃんの席は同じテーブルにセッティング
されていた。待ち時間の間にそこそこ会話を交わしていたので、俺はおもい
きって恵子ちゃんに歳を尋ねた。…31歳。2コ年上だった。

だよなぁ。なんだか会話しててもギャップを感じなかったし、いやむしろ
話が合うなぁと思っていたくらいだ。

「やべぇ…俺、高校生と意気投合してる…」

なんてなことを考えてたから安心した。それからは披露宴そっちのけで
彼女との会話に盛り上がった。彼女は方言と標準語の使い分けができていた。

わざと織り交ぜて会話する彼女は楽しく、決して嫌味な感じもしない。
それもそのはずで、彼女も俺と同じく、県の都市部で働いていたからだ。
他の田中一族の人間よりも都会的な感覚が感じられた。
間違っても春江伯母さんのように

「健吾君(俺の名前だ)いいオドゴだなぁ〜鼻高いし。
 鼻おっぎぃオドゴはアソコもデカイって知ってっか?
 ひゃひゃひゃ。だがら見ろ、ウヂのとーちゃんなんて鼻ちっちぇべ?
 ひゃひゃ」

なんてことは言わない(俺はこの、女だてらに下ネタを連発する春江伯母
さんが大好きで、これだからこの一族との付き合いはやめられない、などと
思っている。ちなみに春江伯母さんは花嫁の母だ)。

そしてお互いの会社が意外に近い場所であることもわかった。


19 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:56:38
披露宴が終わった。
俺はお父さんたち太田家の連中と一緒に帰ることになったが、恵子ちゃん
は2次会に参加するようだった。なんとなく恵子ちゃんと話し足りない感
じがした俺は、別れ際に彼女と電話番号の交換をした。会社も近いことだ
し、今度晩飯でも一緒に食おう、と。

帰りの車中、ふと母が言った。
「アンタ、結婚もダメになったんだから次考えなさいよ。恵子ちゃんなん
かいいじゃない!アタシ、あのコ好きだわぁ」

言い方は悪いが本人に悪気はない。するとお父さんも

「そうだなぁ。歳も近いしいいかもしれんなぁ」

義弟や義妹もノリ気で言う。

「うん!健吾君と恵子ちゃん、合うんじゃないの?」

いきなりくっついちゃえコールの嵐だ。
俺は「そーねー、いいかもねー」と適当に軽く流した。まだこの段階では、
俺は彼女に異性を求めてはいなかった。
会話は楽しかったし電話番号だって交換したが、あくまで
「血縁関係のない従姉=女友達」の図式でしかなかったのだ。



【長編】早く結婚してくれ(2)へ続く。
posted by なな at 02:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛サロン
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