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2006年05月07日

【長編】早く結婚してくれ(18)

早く結婚してくれ
http://love3.2ch.net/test/read.cgi/lovesaloon/1131655290/l50
【恋愛サロン】

720 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:25:23
昼前。
式から参列することになっていたので、早めに式場へと向かった。
郊外の大きなレストランが式場だった。
レストランウェディングというやつだ。
東京などでは珍しくないが、まだまだこの街では目新しい。

控え室で待っていると、友枝が顔を見せた。
俺の姿を認めるや、小走りに駆け寄ってくる。

「おおおつかさぁぁぁん」

予想を裏切らず、友枝はガチガチに緊張していた。
真夏とはいえ、空調のきいた室内なのに、燕尾服の襟元が汗でびっしょりだ。

「だいじょうぶかぁ?」
「気持ち悪いです。吐くかも」
「緊張してるだけだよ。しっかりせい(笑)」
「ダメです。吐いてきます」

そそくさと友枝が手洗いへと消えた。

どうやら式に参列するのは新郎新婦の友人がメインのようで、
会社関係は俺と上司だけだった。
上司と話しているのも飽きた俺は、式場内を当て所もなくうろついた。

721 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:26:27
一際賑わっている部屋があった。
覗いてみると、女友達に囲まれている芽衣子さんの姿があった。

純白のウェディングドレスが、窓から差し込む陽光にやわらかく包まれていた。

美しい。

この姿を見て、ため息の出ないヤツなどいないだろう。

見惚れていたら、芽衣子さんも俺の姿に気づいた。
何か言いたげに、首を伸ばしている。
近くに行きたかったが、
デジカメや携帯を手に群がる女性たちに気圧され、
(また後で)
と手を振り、部屋を出た。

廊下で友枝と再会した。
文字通りスッキリとした顔だった。

「大塚さん!芽衣子さん、もう見ました?」
「うん」
「綺麗でした?綺麗でした?俺、まだ見てないんです」

軽〜く、友枝の頭をひっぱたいた。

「ああっ、セットが!セットが!なにするんスか!?」
「さっさと行け(笑)」

芽衣子さんの部屋の方向に、友枝をドンと押してやった。

やっぱりというか、式の間中、ずっと友枝は泣いていた。
芽衣子さんはこれ以上ないくらいやさしい顔で、友枝の顔にハンカチを
宛がっていた。
ふたりの姿に、参列者から微笑みがもれた。

(でも…俺も泣いちゃうかもしれないな)

ブーケを投げる芽衣子さんの姿に、未来をダブらせた。


722 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:27:28
2次会は街中のレストランバーで行われた。
披露宴から合流した同僚たちと、友枝を囲み、冷やかす。
いまだ興奮冷め遣らぬ体の友枝だったが、
酒と時間がいつもの彼を呼び覚ましていった。

「大塚さぁん、今日は何の日か知ってますう?」

しな垂れかかっていた友枝が顔を近づけてきた。

「お前が裏切り者になった日(笑)」
「なんスか裏切り者って!大塚さんもさっさと独身にオサラバしなきゃダメっスよ」
「わかってるよぉ。早くお前のお仲間になりた〜い(笑)」
「んふっふっふ」
「なんだぁ?気色わりーな」
「だいじょーぶ。大塚さんも結婚できます」
「他人事だと思って(笑)」
「今日はね、大安じゃないんスよ」
「そーなの?…でも、だから?」
「友引っス」

友枝が俺の肩をバンバン叩いた。

「友引に結婚式すると、来てくれた人も結婚できるんですって。
 感謝してくださいよう!
 大塚さんのために、わざわざ大安避けて今日にしたんスからぁ」
「そっか。ありがとな」
「てことで、今日はがんばってください!芽衣子さんの友達いっぱいきてるんスから」

友枝。
もう、がんばらなくてもいいんだぜ、俺。


723 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:28:36
やがて友枝が友人たちと余興を披露し始めた頃、
友人や同僚から解放された芽衣子さんが俺のもとへとやってきた。

「だいじょうぶ?疲れたんじゃない?」
「うん、だいじょうぶ。健吾君、今日は本当にありがとう」
「いやいや。…あ。こっちこそ、ありがと(笑)」
「え?」
「わざわざ“友引”を選んでくれたんだってね。聞いたよ(笑)」
「ああ(笑)すっごく彼こだわってたの、友引に。
 『縁起でもかつがないと大塚さんは結婚できない!』って(笑)」
「失礼な(笑)」
「ねぇ(笑)」

友枝を見、ついで芽衣子さんを見た。

「…いいヤツだよな」
「でしょ?」

芽衣子さんのノロケがうれしかった。

「健吾君、これ…」

芽衣子さんが小さな紙包みを差し出した。
中には黄色い花が一輪入っていた。

「ブーケに使った花。メランポジウムっていうの」

芽衣子さんが花をやさしくつまみ、胸のポケットチーフにそっと挿してくれた。

「健吾君にあげたかったんだ」

“友引”と“メランポジウム”

ふたつの想いに応えたいと思った。

「芽衣子さん。
 俺もねぇ…芽衣子さんに招待状を送れると思う。
 まだまだ先の話になると思うけど…」

口をついて出た自分の言葉に照れ、俯いてしまった。
芽衣子さんの声が1オクターブ高くなった。

「ホントに!?…じゃあ…なのね?」
「うん」
「…よかったぁ…」

ウンウンと、芽衣子さんは何度も頷いていた。
お互いに、おめでとうと言い合った。


724 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:29:33
3次会は辞退した。
腕に絡まる友枝を芽衣子さんに押し付け、熱帯夜の街に出る。
時刻は8時を回っていた。

今一番聞きたい声を求めて、携帯を手にとった。

「お疲れ様」

ああ、恵子ちゃんの声だ。
もう俺はメロメロだった。
更なる欲求に引火する。

「会いたい…なぁ」
「会えるよ」

事も無げに恵子ちゃんが言った。

「今ね、健吾君の近くにいるの。友達と会ってたんだ。今、別れたから…」
「すぐ来て!今来て!早く来て!」

電話の向こうで恵子ちゃんが爆笑していた。

「会いたい」と言えることに感動した。

(“言える”関係になったんだ)

改めて昨夜の喜びを反芻した。


725 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:30:27
指定した喫茶店には恵子ちゃんが先に到着していた。
奥の席に座る恵子ちゃんに近づいていくと、自然に目が合った。
お互いの顔がほころぶ。

俺はどうしちまったのか。
十代の時のような、ふわふわとした感覚。
口にするのも恥ずかしい言葉が頭に浮かぶ。

ときめき。

落ち着いて、冷静に、衝動を抑えながら、恵子ちゃんの向かいに座った。

「お疲れ様!」

満面の笑みで俺を迎えてくれた恵子ちゃんの目線が、俺の顔から胸へと移動した。

「そのお花、最初から差して行ったの?」
「ん?ああ、違う違う(笑)もらったんだ、結婚式で」
「ああ、そっか。なるほど(笑)」
「ガラじゃないなって、思ったんだろ?(笑)」
「うん(笑)」
「(笑)メランポジウムって言ってたかな。ブーケに使った花だって」
「へぇ」
「…恵子ちゃん、これね」
「ん?」
「花嫁さんにもらったんだ」

なぜか、きちんと話しておかなくてはと思った。

「その花嫁さん、昔、俺が付き合ってた人なんだ」
「転勤の時に見送りに来てた人?」
「…憶えてた?」
「うん」

一瞬、場が凍りついたような気がして、慌てておどけた。

「や、妬ける?」

俺の馬鹿な質問に、恵子ちゃんは平然としていた。

「ううん。全然」

そして恵子ちゃんがニコリとして言った。

「だって、これからは私が健吾君のとなりにいるんだもん」

テーブルを飛び越え、恵子ちゃんに抱きつきたかった。
だが代わりに憎まれ口を言って我慢した。

「なぁんだ。つまんねーの(笑)」
「御生憎様(笑)」


726 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:31:56
その後一時間ほど、恵子ちゃんとのおしゃべりを楽しんだ。
チラチラと時計を見出した俺に恵子ちゃんが言った。

「まだ時間だいじょぶだよ。今日、車で来たし」
「いや、二日連続で俺のせいで帰り遅くするのは…。守さんたちも心配するだろうし」

伝票を持ってレジへと向かう。
のそのそと恵子ちゃんが後に続く。
視線を感じる。
じーっと俺を見てる。
なんとかかわして外に出た。

「さて…帰ろっか」
「やだ」

間髪いれずに恵子ちゃんが遮った。
ダダをこねるなんて珍しい。いや、初めてのことだ。

「やだって…そんな(笑)」
「だって…」

「だって今日、初めてのデートなんだよ?
 恋人同士になって初めての!」

そっか。そうだった。言われてみればそうだった。

恵子ちゃんが俺を見上げていた。
その瞳の中、ネオンがくるくる廻る。

2、3メートル先、隣の雑居ビルの非常階段まで恵子ちゃんの手を引いた。
向き直り、ぎゅーっと抱きしめた。

こんちくしょーめ、可愛いなぁ!


727 名前:1 ◆6uSZBGBxi. [sage] 投稿日:2006/04/29(土) 16:32:37
俺の中で、ある考えが首をもたげた。

「恵子ちゃん」
「…ん」
「やっぱり今日は帰ろう」
「………」
「その代わり」
「?」
「俺も恵子ちゃんの家に連れてって」

腕の中で俯いていた恵子ちゃんが、がばっと顔を上げた。

「んえっ!?」

その滑稽な声と表情に、腹を抱えて笑ってしまった。

「なに笑ってんのっ!?…ていうか、なに言ってんの!?」

目頭と痛む腹を押さえ、動揺する恵子ちゃんをもう一度抱きしめた。

「ちゃんとね…守さんたちに挨拶しときたいんだ。
 お付き合いさせてもらってます、って」
「えっ!?いいよぉ、そんなの(笑)」
「まだ早い?」
「ううん、早いとかじゃなくて…。
 ウチの親、そんなに形式張ってないから、だいじょうぶだよ?」
「俺がね、ちゃんとしときたいんだ」

我ながら相変わらずアタマのカタイ奴だと思ったけれど、
ほんの一拍の後、恵子ちゃんが頷いてくれた。



【長編】早く結婚してくれ(19)へ続く。
posted by なな at 01:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛サロン
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