女の子の幼馴染が居た。
近所に住んでいて、物心ついたころから知り合いで、ままごととか一緒にしたのを憶えてる。
小学校あがるころまでは一緒に遊んでたが、
小学校あがった頃からは彼女は習い事行くようになって、徐々に疎遠になった。
その頃の俺はガキだったし、男友達と遊ぶ方が面白かったしね。
小学校卒業する頃には、一緒に遊ぶような事も無く、
出会ったら声掛け合う程度の関係だった。
中学に俺があがった頃、俺は運動系のクラブに入ったが、
いまいち雰囲気に馴染めず3ヶ月で行かなくなった。
クラブ止めたくなったが、うちの中学は生徒全員何らかのクラブに
入らないといけないという決まりがあった。
俺は、帰宅部員収容所と化している文科系クラブに転属届けを出した。
そのまま、帰宅部を決め込んでも良かったが、はじめぐらいは・・・と顔を出した。
その時、幼馴染の彼女が居た。
彼女は習い事に学習塾が忙しいようで、早く帰れるこのクラブに入ったと言った。
優等生タイプ彼女は帰宅部を決め込むことはせず、
習い事に行く前の空き時間に顔を出しているようだった。
帰っても特にすること無かった俺は、
ちょくちょく帰宅部収容所に顔を出してダベるようになった。
失われていた彼女との接点が出来た。
いろいろ雑談した。
俺がバカなことを言った時に、
目を閉じて、ちょっと顔を傾けて、左手で口を隠す笑い方が好きだった。
そう、俺は彼女が好きになった。
それに気づいたのは中学2年にあがるときだ。
405 名前:恋する名無しさん[] 投稿日:2005/05/28(土) 01:37:23
彼女は学校の中でも有数の才女として知られていた。
根がマジメな上に塾にも通っていたから、当然といえば当然だった。
俺の成績は中の中ぐらいだった。
焦った。
クラブは中途半端、勉強がんばる訳でもない。
彼女に全然釣りあわない俺が居た。
勉強にホンキで取り組んだ。
彼女にふさわしい男になるために。
せめて、彼女が通うであろう高校に一緒に行けるように。
中学3年にあがる頃、俺は彼女と同じ学習塾に通うようになった。
自ら望んで親に塾に通わせろとねだった。
・・・珍しいガキだw
恋の力は凄まじいもので、進路考えるころには、
俺も学校有数の成績を収める事ができるようになった。
高校は彼女の行くところを聞き出して(といっても塾同じだから進路聞くのなんて楽勝だ)
同じところを志望した。地元一の進学校。
もちろん合格した。
俺は彼女と同じ学校に通うことになった。
通学路はもちろん同じだ。なんせ近所だし。
朝行く時間もだいたい同じ。
一緒に行くこともあった。
その頃は塾の帰りも遅かったのでいっしょに帰っていた。
406 名前:恋する名無しさん[] 投稿日:2005/05/28(土) 01:37:42
高校のクラスは沢山あったので俺は彼女とは同じにならなかった。
俺は入ったクラスで委員長をやらされる事になった。
ま、中学時代の噂が祟ったのだろう。
入学したてで特に判断基準も無い中、委員長選出することになれば、
中学時代に目立った奴がやらされるもんだ。
女子委員長は他の中学の奴だった。
ちょとイカれてて、進学校にはあんまいないタイプだった。
クラスの雑用をやらされるので、話す機会もある。
女子委員長とは結構早く仲良くなった。
イカれ具合が面白かったしね。
休日に一緒に街に出たりもした。
手繋いだり、もたれかかってきたり・・・
ぁれ?こいつ俺のこと好きなのかな?なんて思った。
俺もちょっと興味惹かれてたりした。
でも、あなたとは付き合えない宣言された。
俺は幼馴染がやっぱ好きだったし、なんとなく見透かされたのだろうか。
そういえば、委員長は幼馴染の比較対照としてしか見ていなかったかもしれない。
彼女には悪いことをしたと思う。
それから、俺はなんとなく覚悟した。
幼馴染には俺の気持ちをはっきりは伝えていない。
何となく悟られてるだろうが、はっきりとは言っていない。
伝えなくてはならないと思った。
でも、はっきりと口にするのが怖かった。
登校中、塾の帰り・・・告白のチャンスはいくらでもあった。
でも、今までの関係が壊れるのが恐ろしかった。
勇気がなかった。
俺はまだまだガキだった。
2年にあがる頃、俺は生徒会役員になった。
委員長やってる奴の中から白羽の矢が立つのは予想できたが、
俺にまわってくるとは・・・
でも、せっかくだから受けることにした。
彼女に並び立つ男になるために。更なる高みをめざして。
役員やるようになってから、ある後輩のコと知り合った。
そのコの明らかに先輩に好意をよせる目。
そして行動の数々・・・それは俺に向けられていた。
どう考えても俺の事スキなんだなと思った。
いやな気持ちはしなかった。
でも、委員長の件があった俺は、そのコを避けた。
マジになれる気がしなかったから。
雰囲気を察したのか、そのコはとは次第にただの先輩と後輩の関係になった。
407 名前:恋する名無しさん[] 投稿日:2005/05/28(土) 01:37:59
いよいよ大学受験が押し迫ってきた。
俺はまだ幼馴染に告白出来ないでいた。
彼女の志望は把握していたので、同じ大学に行こうと思っていた。
・・・まるでストーカーだなw
勉強は忙しかったし、彼女に余計な負担をかけたくない。
告白は合格発表の日にしよう。
そう心の中で決めた。
そして、勉強、勉強の日々。
でも、つらくなかった。
俺の為、彼女との時間の為。
受験勉強はめっちゃ頑張れた。
塾の帰り、家に帰るまでの雑談時間・・・彼女の笑顔が最高に俺の心に響いた。
俺はその時を人生最高の時間だと胸を張って言える。
合格発表の日。
俺は某総合大学に合格した。
彼女も通う、その大学に。
そして、告白しようと決めた、その日、その時。
俺はやっぱり告白出来なかった。
自分が心底不甲斐ないと思った。
家で何度も覚悟したのに、夢の中で何度も練習したのに。
大学が同じだから、まだまだ彼女との接点はある。
そう自分に言い訳した。
でも、それは間違いだった。
大学のキャンパスは分かれているし、授業の時間も場所もバラバラ。
そして、塾に通うことも、もう無い。
俺は彼女との接点を失った。
同じ大学に通っているのに、同じ時間を共有できると思ったのに。
彼女との接点を失ったのがつらかった。でも、行動には移せない。
彼女の面影を探す日々。
過去に捕らわれた日々。
勇気を出せない日々。
一歩踏み出せば解決できたのに、一歩踏み出すことが出来なかった。
俺は自分がかわいいだけのガキだったのだろう。
408 名前:恋する名無しさん[] 投稿日:2005/05/28(土) 01:38:16
大学の4年間はあっというまに過ぎた。
俺にとって空白の4年間。
楽しいはずの時間だった4年間。
それも終わりを告げようとしたその時。
朝、俺は、気まぐれで近所の駄菓子屋兼コンビニと化している個人商店に行った。
そういえば、ココで彼女とよく駄菓子買ったなぁ・・・とか思いながら。
その店から、彼女が出てきた。
嗚呼、久しぶりだな。嬉しいな。
俺の心臓が高鳴った。
やぁ。
おひさ。
逢う時間は減っても、一旦出会えばまたあの日々が取り戻せる。
そう思った。
彼女が俺のバカ話に笑った。
俺の好きなあのしぐさ、あの笑顔で。
目を閉じて、ちょっと顔を傾けて、左手で口を隠す笑い方で。
・・・そして、その左手に光るものがあった。
それは、薬指の指輪だった。
409 名前:恋する名無しさん[] 投稿日:2005/05/28(土) 01:38:30
思わずその指輪の話題に触れた。
話を振った後しまったと思った。
それは、もちろん婚約指輪だった。
彼女の話す、相手との話。
俺は、友人としてそれを聞くことしかできなかった。
なんとか、普通に振舞えただろうか。
俺の心が変わっていないことを、彼女に気づかれなかっただろうか。
あるいは、気づいていても、気づかない振りをしていただろうか。
それとも、初めから気づいていなかったのだろうか。
買い物を済ませて、俺達は家に帰った。
自室に戻った時、俺は泣いた。
人生で一番泣いた。
自分の不甲斐なさに泣いた。
一歩踏み出せなかった自分を呪った。
これが後悔って奴なんだなと身に染みて感じた。
恋に臆病者いらない。
何もしなくて後悔するぐらいなら、行動に移して後悔する方がいい。
頭ではわかっていたつもりだった。そう、つもりでしかなかった。
臆病者のピエロが居たことをここに記す。
同じ間違いを繰り返す奴が減るように、ここに記す。
全てが手遅れになってしまうまえに、行動する奴が増えることを願う。
泣いた